2023年 八ヶ岳春季 Japan Cupに参加して

2021年秋季八ヶ岳大会後一年半ぶりにエンデュランス大会に復帰しました。

相棒も種目も前回と同じサザンクロスM号(愛称ミナちゃん)とのEN40km

2021年秋季は完走しましたが、2023年春季大会は完走ならず、FTQ-OTつまりタイムオーバーで失権という結果でした。

それでも喜びいっぱいでゴールラインを踏んだのには理由があります。

心のリハビリ

2021年秋季八ヶ岳大会のあと、サザンクロスM号はある環境変化から情緒不安定に陥り、様々な問題行動が起きていました。
人間を信頼して集中することができない。クラブの他の馬たちから離すと不安で落ち着かず、脱走してしまう。大会に出るどころか騎乗すらできない、馬装さえも難しい。そんな状況でした。クラブ内外の方に助けていただきながらの長いリハビリが始まりました。
なんとか騎乗できるようになり、少しずつ問題行動も減っていき、長距離トレーニングも始めることでき、、、あれ、もしかして私に集中してくれている?と思えるようになったときにはもう、春季大会が間近に迫っていました。
エントリーに迷いがなかったといえばウソになります。落ち着いてはきたものの完全とはいえない状態で、小淵沢というアウェー環境や競技会という非日常環境に耐えられるだろうか?状態次第ではウィズドローもあり得ると考えていました。

519日(金)波乱の獣医検査

競技場厩舎に入厩したサザンクロスM号は意外と落ち着いていました。しかし、獣医検査前に馬場や検査場の下見に連れていったときには興奮気味。リードを引く私よりも前に出たがる、青草に突進する、という行動に不安を覚えます。
獣医検査では、同じクラブの馬と一緒に検査場に入るつもりが一頭だけで先に入ることになってしまいました。それで私自身の不安が更に大きくなり、それがサザンクロスM号にも伝わったかと思います。聞いた限りでは多くの馬が検査場でバタついたらしいので、場の雰囲気も嫌だったかもしれません。かなりジタバタしながら検査を受け、途中飛び跳ねながらのトロットバイでした。それでも最後まで私と一緒にやりきってくれたのは、彼女なりにいろいろガマンして頑張ったのだと思っています。
ガマンがきかなくなったのはその後。ゼッケン番号を書いてもらおうとしたとき、私の注意が彼女から逸れて、その隙をついて脱走!されてしまいました。(放馬後すぐつかまりましたが。)
最初の問題行動から脱走までの流れを思い返すと、自分自身の不安に影響されて通常よりも馬への気配りや集中力を欠いていたと思います。サザンクロスM号とのコンタクトを維持する、彼女の態度や行動をよく観察し、調整すべきところを調整する、といった当たり前のことができていなかった。そんなことを猛省しつつ、大会本番にああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう、と煩悶する大会前夜でした。

519日(金)そして迎えた大会当日

もし出走できそうな状態だったら同じクラブの馬と伴走することにしていました。2021年は単騎参戦したものの今回はまだ早い、たとえ落ち着いていたとしても単騎で行けというのはサザンクロスM号にとって精神的負担が大きすぎる、と判断したからです。
サザンクロスM号は落ち着いていました。同じクラブの馬と一緒に二人馬で、スムーズなスタートとなりました。順調に走行し、おおむね予定通りの時間配分で第一ループを走り切りました。
私の場合、第二防火帯は馬の体力温存のため早めに下馬して引いて登るようにしています。今回はサザンクロスM号がもっと早く行きたいというので、坂の途中で再騎乗したところしっかりした歩みで最後まで登り切ってくれました。(2021年の大会では、防火帯の途中で再騎乗しようとしたら断固反対!絶対にイヤ!自分の足で登って!と拒否されたものです、、、)
走行時間はもう少し縮めたいところですが、前日の大雨による悪路でしたのでスピードアップはしませんでした。滑りやすいところや脚が抜けにくいところなど馬の脚に無理がかからないように、ここは少しゆっくり行こう、ここは大丈夫だから少しスピード上げよう、と、道中ずっと馬に語りかけていたように思います。

 

第二ループではスタートゲートを出たところで二頭とも拒止。ここで下馬して引馬に切り替える判断が遅く、無駄に時間を使ってしまいました。その後、ところどころで二頭の強烈な拒止にあい、時には片方・時には両方が下馬して引きました。
サザンクロスM号が今回初めて経験する火の見の往復と藤棚の往復は拒否反応が強かったと感じます。行きたくないよね、でもそこを何とかがんばろうよ。行けそう?じゃあ行こう!と励ましながらの走行でした。ちなみに、県境で神社方向に折れたとたんに馬たちが元気になったのはご愛敬。防火帯に行かなくていいの?ヤッター!という声が聞こえそうな歩様でした。
過去の大会でサザンクロスM号は騎乗時に動いてしまうクセがありましたが、今大会ではちゃんと停止していることができました。おかげで、たびたびの下馬・再騎乗が苦になりませんでした。大会前にいろんなところで下馬・再騎乗の練習を重ねた成果かと思います。
コース終盤、これはタイムアウトだなとわかったのですが、馬の状態は悪くない(まだ元気に走れる)と感じたし実際馬たちも頑張っていたので、最後までコース通りに走ってもらいました。ゴール後のクーリングや獣医検査も通常通り行いました。リードで保定する必要もないくらい落ち着いてクーリングを受け、獣医検査も落ち着いてこなす姿に、ああ、あの頃(2021年)のサザンクロスM号だ、と胸が熱くなりました。
タイムアウトしてしまってクルーの皆さんやクラブ関係者の皆さんには申し訳なかったです。ただ、私自身はこれほど晴れやかな気持ちで失権したのは初めてでした。一年前は大会に出るなんて考えることすらできない状態でしたから、大会に出られるだけでも上出来だと思っていました。それが、期待をはるかに超えて40kmを走り切ってくれたのですから、失権だろうがなんだろうが笑顔にならないわけがない!

ツヤツヤのわけ

ゴール後、サザンクロスM号の歩みはしっかりしており、水も良く飲んで、心拍もすぐ下がりました。獣医師さんから「まだまだ走れます、っていう余裕を感じますね」と言われたのが嬉しかったです。また、過去の大会では脱水2になるのが常だったのに、今回は両区間後とも1でした。見るからに様子も毛艶もいい。そういえば、第一防火帯も途中で減速することなく登り切ったし、第二防火帯も騎乗した状態でしっかり登坂できた。これまでにないことです。
素人考えですが、トレーニング量を増やしたことがひとつの解ではないかと思います。サザンクロスM号の不安に寄り添いたい、できるだけ一緒に過ごしたい、という思いもあって、2023年春季大会に向けては過去大会よりもトレーニング回数を増やしていました。過去の大会で見られたいくつかの課題はトレーニング量の不足が原因だったのかもしれません。今大会くらいのトレーニング量がちょうどいいのかも。大会に出てみることで発見することがたくさんあるなと改めて感じました。

〇〇〇までがエンデュランスです

 

この大会は苦労もしたけれど、なんだかとても楽しかった。同じく愛馬といろいろあったクラブ仲間と一緒に出場して、それぞれの馬の成長や前進を喜ぶことができたし。ベテランも初参加の方もみんな一生懸命に人馬をケアしてくださった素敵なクルーチームだったし。大会が終わってしまって残念な気持ちになったのを今も覚えています。
獣医師団長の中島先生の締めの一言を否定するわけではない(むしろ、大好き!)ですが、私は個人的に、馬がクラブ厩舎に無事に戻り脚の腫れや体調不良がないことを確認するまでがエンデュランス、自分は馬に対して何ができたか・できなかったかを認識するまでがエンデュランス、と思っています。大会の結果が良かった・悪かったで終わらず、大会のその先に続く物語をサザンクロスM号と一緒に綴っていけたらいいなと思うのです。
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